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バセドウ病や甲状腺がんでアイソトープ治療を受けられる患者さんへ

これから妊娠されるバセドウ病の患者さんへ

バセドウ病や甲状腺がんでアイソトープ治療を受けられる患者さんへ(2018.10.04)

「会員の皆さまへ」のページに「ヨウ素制限をおこなうかたに - 低ヨウ素食レシピ集 - 」を掲載しました。ご希望の方は、主治医(甲状腺学会員)に依頼して、ダウンロード・ プリントアウトをしてもらってください。

これから妊娠されるバセドウ病の患者さんへ(2011.11.30)

「妊娠初期に内服した抗甲状腺薬が赤ちゃんに与える影響の調査」(POEMスタディ)の中間結果と今後妊娠する際のご注意

バセドウ病の治療薬には2種類ありますが,一般的にはまずメルカゾールが使われます.その理由は,もう一方のチウラジール(またはプロパジール(製薬会社の違いで名前が異なります.))よりもよく効くこと、ときどきみられる軽症の肝機能障害や、ごくまれにみられる重症肝障害や血管炎症候群*1が,チウラジールより少ないことがわかっているからです.

バセドウ病の患者さんが妊娠しても,甲状腺機能が改善すれば,一般の妊婦さんと変わりなく出産することができます.バセドウ病の薬というと先天異常(部分的な形態の異常)を起こすのではないかと心配されますが、先天異常は,薬を飲んでいない健康な妊婦さんの赤ちゃんにもみられることがあります.バセドウ病の薬を飲んだ妊婦さんから先天異常のある赤ちゃんが生まれる割合は、健康な妊婦さんの場合と同じといわれています*2.そしてそれらの先天異常の原因は,ほとんどの場合不明です.ただメルカゾールには,妊娠初期にのんだ人の赤ちゃんに,一般の赤ちゃんにはあまりみられない種類の先天異常*3がみられたという報告があるため,妊娠初期,ことに妊娠4~7週は,メルカゾールを避けた方が無難だとされています.しかし前に述べたように,メルカゾールの方が薬として優れている点が多いので.このような先天異常が本当にメルカゾールと関係があるのかどうかを調べる必要がありました.

そこで,妊娠と薬情報センターと全国の甲状腺専門医などが中心となり、バセドウ病をもっている妊婦さんにご協力いただいて,2008年1月から2014年秋までの予定で,妊娠初期にメルカゾールを飲んでいると、チウラジールを飲んでいる方や何も飲んでいない方より赤ちゃんにそういう特殊な異常が起こるかどうか調べています.

まだ途中経過なのですが,2011年6月までの間に、妊娠初期にメルカゾールを飲んでいた95人の妊婦さんのうち,妊娠初期(12週位まで)にずっと続けて飲んでいた人たちの中の5人の赤ちゃんに,臍腸管遺残や臍帯ヘルニアなどという,‘臍(へそ)’に関連した異常と,頭の皮膚の一部分が欠損している異常(頭皮の欠損)がみつかりました*4.これらは、メルカゾールを飲んだ患者さんから産まれてきた赤ちゃんに認められたとして、以前から報告されている異常です.妊娠がわかってすぐにメルカゾールをやめた妊婦さんでは、これらの異常はみられませんでした。また、チウラジールを飲んでいた妊婦さんや,これらの薬を飲んでいなかった妊婦さん(合計206人)の赤ちゃんにもこうした異常はみられませんでした.

流産や死産を除いた子ども(生産児)での先天異常の頻度は下の表のようになります。

妊娠初期の服用 生産児数 MMI関連
先天異常例数
MMI関連先天異常の発生頻度
(95%信頼区間※)
メルカゾール 85例 5例 1.9~13.2%
チウラジール 121例 0例 0.0~2.4%
どちらの薬剤も服用なし 83例 0例 0.0~3.5%

※真の値がその区間に含まれる確率が95%となる値の範囲.

この結果から,こうした先天異常は妊娠初期にメルカゾールの服用を続けていたことと関係があると考えられます.幸い,今回みられた赤ちゃんの異常は,手術によってよくなるものばかりでした。ただ、やはり妊娠初期のメルカゾールの継続服用はできるだけ避けたほうが良いでしょう.具体的に妊娠初期のどの時期までにメルカゾールを止めれば問題ないのかなどはこれだけでは分かりませんので,もう少し調べる必要があります.またチウラジールは,今回の結果からみるとメルカゾールでみられた先天異常との関連はなさそうですが,これも確実にするにはもう少したくさんの人たちで調べなければなりません. 2014年秋に調査が終わったときには、もっとはっきりしたことがいえるでしょう

今回の中間結果から以下のことをおすすめします.

妊娠初期にメルカゾールを飲むことをできるだけ避けるため,妊娠は可能なかぎり計画的にしてください.メルカゾールを飲み続ける場合は、できれば妊娠したらバセドウ病の治療をどうするのか、事前に担当の先生と相談しておくことをお勧めします。あるいはできるだけ早く妊娠したかどうかを知るために基礎体温をつけ,その可能性があった場合はできるだけ早く市販の妊娠診断薬で確認するようにして下さい。確認できたときは、飲むのは止めてすぐに担当の先生に相談して下さい。
バセドウ病の治療には、薬の他、手術やアイソトープで治す方法があります。バセドウ病の薬をきちんと飲んでいても甲状腺機能がなかなか正常にならない場合や、薬で副作用がでた場合は,手術やアイソトープ治療でバセドウ病をしっかり治してから妊娠する方法がありますので、担当医とよく相談して下さい.
チウラジールが副作用などで使えない場合には、甲状腺機能のコントロールのために妊娠初期もメルカゾールで治療する場合があります。(その際は、メルカゾールに関連した先天異常合併のリスクに関してカウンセリングを受ける方法がありますのでご希望の方は妊娠と薬情報センターのホームページをご覧下さい (URL:http://www.ncchd.go.jp/kusuri/)。)なお、妊娠初期以外は先天異常との関連はありませんのでチウラジールよりメルカゾールがすすめられます。
*1
稀な副作用ですが,メルカゾールに比べてチウラジールで約40倍のリスクといわれています.
*2
一般の妊婦さんの子どもに先天異常がみられる頻度は1~3%といわれています.
*3
後鼻孔閉鎖,食道閉鎖,臍帯ヘルニア,臍腸管遺残,頭皮欠損などです.それぞれの頻度は報告のあるもので3000人に1人前後です.
*4
臍腸管遺残1人,臍腸管遺残と臍帯ヘルニアの合併3人,臍腸管遺残と頭皮欠損の合併1人,

2011年11月30日

日本甲状腺学会「バセドウ病薬物治療ガイドライン」作成委員会
委員長 中村 浩淑
委員 (特殊なバセドウ病患者:妊婦・授乳婦担当) 百渓 尚子、日高 洋

「妊娠初期に投与された抗甲状腺薬の妊娠結果に与える影響に関する前向き研究
(Pregnancy Outcomes of Exposure to Methimazole Study: POEM Study)」グループ
研究代表者 荒田尚子

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