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学会雑誌抄録

『日本甲状腺学会雑誌』2011年10月号(Vol.2 No.2)

[特集1]甲状腺画像診断

甲状腺腫瘍, 特に分化癌のFDG-PETないしPET/CTによる診断

[症例報告]

バセドウ病に合併した類もやもや病の3例

[特集1]甲状腺画像診断

甲状腺腫瘍, 特に分化癌のFDG-PETないしPET/CTによる診断

中駄 邦博

* 北光記念病院放射線科

Key words
甲状腺分化癌(differentiated thyroid cancer),PET(positron emission tomography),
サイログロブリン(Thyroglobulin:Tg),甲状腺刺激ホルモン(thyroid stimulating hormone:TSH),
フルオロデオキシグルコース(fluorodeoxyglucose:FDG),放射性ヨード(radioiodine)

要旨
甲状腺分化癌の術後再発,転移の診断において F-18 fluorodeoxyglucose(FDG)を用いたPET ないし PET/CT(以後,一括して PET と記載する)は有用な検査である。特に放射性ヨードによるシンチグラフィが陰性で,血清サイログロブリン値が上昇している症例において病巣の検出に有用である。FDGの集積は腫瘍内のglucose transporter(GLUT)の発現やhexokinase(HK)活性の影響をうけるが,甲状腺腫瘍の臨床病理学的所見,TSH 値,Tg 値の影響も議論されている。術後の転移,再発における診断と比べると術前診断に関する PET の意義は controversial であり,充分なエビデンスがあるとはいえない。PET による診断においては,画像の視覚的評価,定量的評価,生理的集積,偽陰性や偽陽性についての理解が大切である。近年の海外からの報告は PET の有用性を強調しすぎている印象もあり,我が国の現状を基にした PET のエビデンス作りが望まれる。

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[症例報告]

バセドウ病に合併した類もやもや病の3例

植木 郁子,堀江 一郎,安藤 隆雄,今泉 美彩,宇佐 俊郎,川上 純

*長崎大学病院 内分泌代謝内科

Key words
バセドウ病(Graves’disease),もやもや病(moyamoya disease),類もやもや病(moyamoya syndorome),
甲状腺中毒症(thyrotoxicosis),脳虚血(cerebral ischemia),TIA(transient cerebral ischemic attack)

要旨
類もやもや病は,もやもや病(ウィリス(Willis)動脈輪閉塞症)類似の脳血管異常所見を呈し,原因となりうる自己免疫疾患などの基礎疾患を有するもので,もやもや病と区別されている。バセドウ病も類もやもや病の原因として報告があり,甲状腺ホルモンの変動と類もやもや病に伴う神経症状の変動に関連があることが示唆されている。本稿では,当科で経験したバセドウ病に合併した類もやもや病の3症例を報告する。3症例とも若年女性で,甲状腺機能亢進状態の時に一過性脳虚血発作やくも膜下出血といった類もやもや病症状が顕在化していた。バセドウ病と類もやもや病の合併は本邦を中心に散見されるが,その病態に関しては不明な点が多い。3症例の報告に加え,バセドウ病と類もやもや病の病態の関連や治療方針について考察する。

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