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日本甲状腺学会の紹介

理事長挨拶

理事長写真
日本甲状腺学会理事長
橋本 貢士

  2025年11月29日に開催された会員総会において、田上 哲也先生の後任として日本甲状腺学会の第8代理事長に就任いたしました獨協医科大学埼玉医療センターの橋本 貢士(はしもと こうし)でございます。歴史と伝統ある本学会の理事長に選出されたことを大変光栄に存じますとともにその重責に身の引き締まる思いです。私は今まで、山田 正信元理事長の推薦理事として学術、国際部門を担当し、その後選出理事として菱沼 昭先生および前任の田上 哲也先生の理事長のもとで庶務理事を務めて参りました。その間アジア・オセアニア甲状腺学会(AOTA)のcouncil memberとなり現在はtreasurerを拝命しております。さらに庶務理事としては、わが国の甲状腺研究を発展させるため、基礎および臨床研究を志す若手研究者を育成・支援することを目的として、「次世代研究者の会(Next-generation committee of Thyroidologist in the Japan Thyroid Association, 以下NexT-JTA)」を立ち上げました。これまで、会員の皆様の御支援と御協力を頂きましたことを、心より感謝申し上げます。

 さて、日本甲状腺学会は、甲状腺学の進歩と向上をはかることを目的とし、学術集会の開催・国際交流の促進・研究者および優れた臨床医師の育成その他を行う学術団体です。

 具体的には、

(1) 甲状腺学に関する調査・研究及び教育
(2) 甲状腺学に関する学術集会、教育研修会及びセミナー等の開催
(3) 甲状腺学に関する機関誌及び学術図書等の発行
(4) 甲状腺専門医及び甲状腺専門医施設の認定のための諸活動
(5) 国内外における関連学会、団体との交流及び連携
(6) その他、本法人の目的を達成するために必要な事業

 を目的としています。

 本会は、1958年5月に設立され、初回学術集会となる第1回甲状腺研究会が京都大学の三宅 儀先生により京都で開催されました。以来、全国の大学や専門病院の主催で、毎年各地で学術集会が開催されてきました。1980年5月に日本内分泌学会の甲状腺分科会となり、1996年10月に日本甲状腺学会と改称され、2020年10月には山田 正信元理事長のご指導のもと一般社団法人となりました。2025年には菱沼 昭元理事長及び田上 哲也前理事長の多大なるご尽力によって、本会の悲願であった日本医学会へ加盟することができました。また2025年には会員数も3,000名を超えました。私は本学会とわが国の甲状腺学のさらなる発展に向けて、粉骨砕身、自分の名前通り「貢献」したいと思います。

 目下、やらなければならないことが山積しています。以下に私の主たる抱負を掲げます。

サステナブルに発展し続ける学会を目指す。本学会の未来は若手の会員にかかっています。会員数3,000名突破に満足せず、今後も若い医師、研究者に加入し続けてもらえるような魅力ある学会を目指します。そして一人でも多くの若い医師、研究者に甲状腺学を志してほしいと思います。その手立ての一つとして2023年に発足したNexT-JTAの支援を継続的に行い、若手研究奨励賞(YIA)受賞者を主として、若い甲状腺学研究者のさらなる発展を後押しします。そして現在、全国の大学において絶滅危惧種となっている「甲状腺学を専門とする教授」を輩出できるように尽力します。
学会独自の専門医制度の発展:甲状腺疾患の診療には内科、外科、小児科のみならず、放射線科、核医学科、臨床検査科、病理、耳鼻咽喉科・頭頸部外科、内分泌外科並びに産科婦人科など多くの診療科の協力が必要です。「甲状腺専門医」制度は本学会独自の専門医制度として、会員の生涯教育の手段としてこれからも発展、拡充して参ります。学術集会時に開催される専門医教育セミナーやバーチャル臨床甲状腺カレッジもその一環です。バーチャル臨床甲状腺カレッジについては近々に全面リニューアルを図ります。また生涯教育の指針となる「甲状腺専門医ガイドブック」の更新を行います。
甲状腺検査の標準化:TSHに関しては20歳から60歳の範囲でハーモナイゼーションが行われ、一定の「標準化」がなされましたが、今後は男女別、一歳刻みの基準範囲の設定が必要です。また妊娠各三半期ごとの基準範囲の設定も必要です。さらにFT4の標準化もまだなされておらず、喫緊の課題です。
ダイバーシティ支援と「性差医学」への意識づけ:学会専門医、評議員、理事はまだまだ男性優位の状況です。女性甲状腺医/研究者支援委員会J-WIT (Japan Women in Thyroidology)を基盤として、女性の会員がもっと本学会の中心で活躍することで、学会をさらにパワーアップしていきます。またこれからはただ単なる「女性支援」でなく、もっと幅広い視点に立ったダイバーシティ支援を行っていきます。また甲状腺疾患は女性に多い病気です(女性は男性の約10倍)。今後はもっと性差を意識した甲状腺疾患診療が望まれるべきであり、本学会も「性差医学」を意識した診断や治療ガイドラインの作成を目指します。
研究助成と成果の発信:基礎研究者への支援(基礎医学研究助成など)、AOTAを主軸とした国際交流の推進、学会ホームページの更新・刷新などを進めていきます。また新たに創刊された学会公式英文誌(Thyroid Science)にわが国の甲状腺疾患関連ガイドラインや国内外の研究成果を掲載することで国際的なプレゼンスを向上させ、インパクトファクターの獲得を目指します。
一般医家への啓発活動:甲状腺疾患に関する数々の臨床重要課題について、会員の方々のみならず、一般医家の方々にとっても日々の診療に役立つものとなるよう、引き続き解決していきます。種々の診療ガイドラインについても、追加・改訂・周知していきます。さらには非専門医の先生方が「甲状腺疾患を見逃さないようにする」ための刊行物も出版していきます。
患者さんへの啓発活動:毎年5月25日は世界甲状腺デーです。市民公開講座を通じて患者さんはもとより、患者さんではない一般の方々へも「甲状腺疾患」について知ってもらえる機会を作り出していきます。
新薬の開発・適応への協力:最近、甲状腺眼症に対する新しい薬剤が健保適応になるなど、最近の抗体薬や分子標的薬の進歩は目覚ましいものがあります。今後ますます多くの新薬の登場が期待され、わが国でもそれらの薬剤の治験が始まっています。患者さんに最新で最良の治療を少しでも早く提供できるように、それらの薬剤の開発と保険適応について、学会として積極的に関与していきます。
日本内分泌学会との連携強化:2026年に日本内分泌学会は創設100周年を迎えます。本学会も内分泌学会の分科会の一つですので、これを機に次の100年を目指して、さらに内分泌学会との連携、相互協力を深めていきます。

 このようにやるべきことはたくさんありますが、実現するために一歩一歩着実にかつ全力で取り組む所存ですので、会員の皆様におかれましては、今後とも日本甲状腺学会の発展に御支援と御協力を頂けますようよろしくお願い申し上げます。

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